帰る場所

2017/ 07/ 15
                 
七月も半分を終え、あとひと月もすればお盆休みに入る。北海道は連日の猛暑で病院送りになる人が増えた。ふと気付いたのだが、私は暑さにめっぽう強い。カリフォルニアやメキシコ、ハワイの暑さを十二年ほど体験しているからだろう。かつて実家のあったイリノイ州のシャンペインというど田舎では、真夏に45℃を体験している。しかしそんな暑い場所でも、日本のような湿度はなかった。北海道に長く暮らしていると、東北辺りから西の湿度には耐えられない体になる。グアム島くらいまで行くと、あの湿度はもはや浴室と同じ。しかしあそこで生まれ育った人には、ホッとする湿度らしい。確かに、お肌には良さそうだ。

今年も恒例の帰省ラッシュがくるんだな。うちの親戚筋はお盆の航空券を五月に予約しなければ手に入らないと言っていた。交通機関の全てが満員。道路は大渋滞。私にはそんな民族の大移動に参加する気力がない。幸い私にはもう帰る場所がないので、何処へ出掛けることもなく、仕事の無い日は築四十年のアパートで過ごす。書いていて気付いたのだが、私が人生で一番長く暮らしているのはトラックの中だ。

八月の十日くらいから街の人口が激減する。人も車も極端に少ない静かな街は、なんだかとても安らぐ。空中に漂う人々の思考や感情の束が消える瞬間だ。そんな空気を胸一杯に吸い込み、「あぁ、ここが自分のバースプレイスなんだよな」と、しばし温もりに浸る。わざわざ帰る必要のないことに感謝するべきだろう。顔を見せに行かなくてはならない義務のある両親もいない。海外を放浪する青春時代を送ったお陰で、結婚はできたが、この暑い夏の日に何処かへ遊びに連れて行く子供もいない。「寂しくないか?」と訊かれることもあるが、私は孤独を知らない。独りでいられる場所には喜んで飛び込む。今いる場所が、私の帰る場所なのだ。
                 

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